辛さが苦手だからといって、単純に唐辛子を抜くと不味くなる
皆さんは辛いものは好きでしょうか?エスニック料理好きだと「辛くないと美味しくない!」なんて方も多いと思います。さて、今回のお悩みはそんな辛いものにまつわる相談です。
Q)
私はエスニックが大好きで、辛い料理も得意なのですが、彼氏が辛いものが全くダメなんです。大好きなエスニックを作る時も唐辛子をほとんど使うことができません。レシピから唐辛子を抜いてしまうと、なんだか美味しくなくて…。どうしたらいいでしょう?
(25歳女性 Bさん)
A)
せっかく大好きな人と一緒のご飯。お互い美味しいを共感したいですよね。辛いのが苦手な彼のために唐辛子を抜いて作ってみたところイマイチになってしまった。Bさんとしては辛い料理の辛味がなくなったから、物足りなくて美味しくなくなったと思っていませんか?
実はこれ「辛くない」から美味しくなかっただけではないんです。美味しくなくなった原因について見てみましょう。
唐辛子を抜くと美味しくなくなる原因
前回「スパイスはほとんどがマズい」というお話を書きました。(まだ読んでいない方はこちらからどうぞ。「スパイスの味は不味い!?スパイス使いの処方箋その1」)
唯一美味しい(旨味がある)スパイスがあります。それが、唐辛子。唐辛子はナス科トウガラシ属に属する植物で、旨味や酸味、甘みを持った果実です。旨味の強い野菜の代表格であるトマトの親戚で、旨味や酸味、甘味はトマトに近い成分を持ち合わせています。また、風味も赤唐辛子なら甘い果実のような風味、青唐辛子ならフレッシュなハーブのような爽やかな香りを持っています。
辛味を抑えたかったが故に、唐辛子を単純に抜いてしまったところ「旨味」が足りなくなり、「風味」も物足りなくなってしまったんですね。では、どうしたら良かったのでしょうか?いくつかの方法で解決を考えてみましょう。
唐辛子の辛味を抑える6つの方法
辛い唐辛子を辛くない唐辛子に変えるパターン
方法①赤唐辛子を、韓国産の唐辛子かパプリカにする
唐辛子は品種改良を重ね、現在では千種類以上にも及ぶといわれています。それらの品種の中には超激辛のものから、全く辛くないものまで様々あります。そこで、使う唐辛子の種類を辛くないものを選んでみてください。
例えば、国内で入手しやすいものだと「韓国産の唐辛子」。韓国料理のチゲ鍋などは見た目は真っ赤ですが、味は思ったほど辛くないと思ったことはありませんか?これは唐辛子を大量に入れていても、それ自身が辛くないため。日本の唐辛子と比べて辛味がマイルドで甘味が強いのが特徴です。
他には「パプリカパウダー」。意外に感じるかもしれませんがパプリカもナス科トウガラシ属の植物で唐辛子の一つです。パプリカはサラダにもよく使われるように、全く辛味がありませんが旨味や甘味などは辛い唐辛子と同じものを持っています。そこでチリパウダーの代わりにパプリカパウダーを置き換えることで旨味や風味を減らさず辛味だけを弱めることが可能です。
方法②青唐辛子はシシトウ、ピーマンに置き換える。
青唐辛子の場合はどうでしょう。メキシコの辛いトマトソースの代表格、サルサソースでは青唐辛子の青っぽい香りが不可欠。入れないとなんだか物足りない風味になります。ここでも置き換えて考えてみましょう。置き換えるのはシシトウやピーマン。青唐辛子と同じ分量だけ入れることで、辛味はないもののしっかりと風味のある美味しいサルサを作ることができます。
また、多少は辛いものも大丈夫。ということであれば青唐辛子を長野県で栽培される地場野菜「ぼたんこしょう」など比較的辛味がマイルドな品種に置き換えてみるのも良いでしょう。
辛味を油や酸でボカすパターン(マスキング)
唐辛子の辛味のもと、カプサイシンは脂溶性(油に溶けやすい)成分。辛い時に水をガブガブ飲んでも辛味が引かなかったことはありませんか?あれは舌に張り付いたカプサイシンが水では流すことができないから。一方、インドカレー屋さんに行くと出されるラッシーは乳脂肪(油分)の力で辛味を弱めることができるとされています。
このカプサイシンの特徴に注目してあげることで、唐辛子の力を少し弱めてあげることが可能です。つまり唐辛子が溶けやすい「油」「酸」「アルコール」といった成分を持つ材料を加えたり、飲み物として口直しに飲むことで辛味を少し抑えることができます。具体的に効果のある食材を見ていきましょう。
方法③マヨネーズ(酸+油)
マヨネーズの中に入っている、酢酸、油は共に辛味をマスキングする効果があります。小さいお子さんをお持ちのお母さんだと、カレーにマヨネーズを混ぜると子供が食べられたなんて話もよく聞きます。料理の味が結構変わってしまうので入れ過ぎ注意ですが、効果は抜群です。
方法④レモン、ライム、酢酸(酸)
タイ料理やメキシカンなどでよく使われるレモンやライム。これらの中の酸は辛味の抜けを良くします。酸を入れた場合は、酸味は辛味の刺激自体は弱めることはないのですが、辛味の抜けは早くなります。つまり、辛いことは辛いけど、ずっと続くような辛さの持続時間が短くなるということです。世界各国のエスニックでよく使われる組み合わせの一つです。
方法⑤乳製品/植物性ミルク(油)
牛乳、生クリームと言った乳製品も辛味を抑える効果があります。料理に加えることでカプサイシンの当たりが弱くなり、最初のヒリヒリした感覚を弱めることができます。アーモンドミルクや豆乳、カシューナッツミルクと言った植物性ミルクも効果があります。カレー作りでヨーグルト、生クリーム、カシューナッツミルクを加えるのは旨味や風味づけの意味合いが大きいですが、辛味を抑える効果も期待できるためです。
方法⑥動物性油、植物性油(油)
ラー油で真っ赤な麻婆豆腐など激辛なイメージがあると思います。しかし実は油が浮いている料理はどろっとした辛い料理よりも辛味の引きは早いという特徴があります。中華料理の激辛料理「辣子鶏(鶏肉と唐辛子炒め)」などでは、揚げた鶏肉を具材にすることで、辛味を和らげたりすることも多いようです。
注意点としては、これらの何かを追加して辛味を弱める方法は、基本的には辛味自体の量は減ってはいません。そのため辛味が強すぎた場合はどれだけ足しても効果がないことがほとんど。あくまで食べられるレベルの辛さだけど、ちょっとだけ弱くしたいという時に使ってみてください。
Bさん、ぜひ唐辛子の辛味をうまくコントロールして、彼氏と一緒に美味しいエスニックを楽しんでみてくださいね。
料理は感覚だけでは難しい
料理は正直、感覚やイメージで語られることが多すぎると思います。情報が古かったり間違っていたりする事が多いのも事実です。
こうした、料理をする上で不要な情報を削ぎ落とし、必要な情報をお伝えすることをブログやレッスンを通じて行っています。ブログではどうしても伝えきれない部分をレッスンでお見せしながら伝えています。
さらなるレベルアップを考えている方は、ぜひレッスンにも一度来てみてくださいね!
近藤 潤(エスニックレッスン担当)