お酒やみりんは、煮物の煮崩れ、味染み、柔らかさには無関係

こんにちは!シェフクリエイトの日吉です。

皆さん、おでんや肉じゃがなどの煮物や、煮込み料理を作る時には、大根などにしっかり味の染み込ませて食べたいですよね。その時によく使うのが「みりん」や「お酒」ですが、なぜ入れるべきなのか疑問に思ったことはないでしょうか?

もちろん旨味、甘味、風味などを加える味付けのためではあるのですが、インターネット上を調べてみると、「煮崩れを防ぐため」「味の染み込みを良くするため」「柔らかくするため」など、味付け以外の目的が書かれている記述をたくさん目にします。特に和食系の料理で言われることが多いようですね。

しかし、結論から言うと、これらは通常の煮物や煮込み料理であれば無視して大丈夫です。今回の記事では、これらの定説が本当に効果的なのか、実験をして検証してみました。

「煮物に入れるお酒やみりんの役割」の定説

ざっと調べてみると、主に3つの定説があるようです。一つずつ見ていきましょう。

味を染み込みやすくする

お酒やみりんを調味料と一緒に使うことで、味(調味料)の染み込み具合をより高めることができるという話です。あるサイトでは、以下のような記述があります。

「本みりんに含まれるアルコールには、材料に浸透していく際に他の調味料やうまみを一緒に浸透しやすくさせるという効果があるので、料理に本みりんを使用すると、味の染込みがよくなります。」

「アルコールは、ほかの調味料より分子が小さいので素材に素早く浸透して、ほかの調味料を素材に染みやすくしてくれるので、料理酒を使うことで味が染みやすくなります。」

とあります。アルコールは食材に浸透しやすい性質を持つため、料理酒やみりんに調味料を溶かすことで染み込みを促進するということのようですね。

煮崩れを防ぐ

お酒やみりんは、具材の煮崩れを防ぐという記述も多数見つかります。

「肉じゃがに本みりんを使用するとじゃがいもの煮崩れを防ぐことができます。じゃがいもの煮崩れは、じゃがいもに含まれるペクチンという物質(細胞壁の構築や細胞同士をつなぎとめている)が、加熱によって溶けてしまい、細胞壁が壊れたり、細胞同士の接着がはがれたりすることで起こります。

本みりんに含まれるアルコールは、ペクチンを溶けにくくする作用があり、煮崩れを防ぐのに大きく寄与します。また、アルコールを単独で使用するよりも、糖とともに用いることで相互作用が働き、より効果的に煮崩れを防止することができます。」

アルコールにはペクチンを溶けにくくする作用があるために煮崩れを防げるとのことです。このサイトでは、顕微鏡を使って組織の崩れ具合がどう変わるのかを観察していて、たしかに差はありそうでした。しかし問題は、科学的にミクロの世界でそれは正しくとも、実際の料理上でこれが差として体感できるかどうかが問題なんですよね。人間が体感できない差であれば、料理的には無視して良いからです。(もちろん全く新たな商品や開発をしている方々は知っておくべきですが、それはまた別の話)

食材を柔らかくする

こちらもやはり、アルコールが関係するそうです。

「アルコールには、食材の保水性を高めやわらかくする効果があり、また酒に含まれる糖分がタンパク質と水分を結びつけ素材をやわらかくします」

アルコールは分子が小さいために素材に染み込みやすく、繊維の間に入り込んで隙間を広げてほぐす働きとなるため、食感が柔らかく感じるようになるという話。

しかし、これは肉のタンパク質でよく言われる話で、大根などの野菜類にもはたして効果があるんでしょうか?ここはけっこう疑問です。

実験をしてみた。しかし、すべて体感できず。

はい。実験をしてみました。それぞれどのように行ったかは後述をご覧ください。

結論としては、すべて体感することは出来ませんでした。料理として行われる範囲内で体感ができないのであれば、これらの効果は一旦無視しておいてよいのではないでしょうか?

では以下、具体的にどのように実験したのか、内容を見ていきましょう。

アルコールを加えた煮込み実験(濃度0%、1.5%、3%)

実験を行う上で想定した料理は、おでんと肉じゃが。文章だけ読んでも想像しやすくするためにド定番の料理を選びました。実験はこのような手順で行いました。

  1. 大根とじゃがいもを、それぞれ同じ位のサイズにカット
  2. ウォッカと調味液を入れた袋にパックして、おでんとして程よい食感になるまで加熱
  3. そのまま常温で2時間放置して、味の染み込みを確認した

お酒はウォッカをチョイス。アルコールに先述の効果があるということだったので、みりんやお酒に比べてより純粋なアルコールに近い方が変数が少なくて良いと思ったからです。同様の理由で、味の染み込みを確認する調味料には、精製塩、甘味には砂糖、旨味には味の素を使用して、極力他の成分を加えないようにしました。

調味液の作り方ですが、煮物の基本はおおよそ「水8:みりん1:醤油1:砂糖0.5」というバランスなので、それと同じようになるようにしました。みりんのアルコール度数は約14%、濃口醤油は約16%の塩分濃度なので、水に加えると塩分とアルコール度数はどちらも1.5%前後という事になります。「水100gに塩1.5g、砂糖0.5g、味の素1g」を加えて調味液とし、そこにウォッカをアルコール度数1.5%となるように加えた物、3%となるように加えた物、加えずに0%のものと3パターン作りました。

大根とジャガイモを煮る

さて、これに同じ大きさにカットした大根とジャガイモを加えてパックし加熱していきます。大根はおでんとして、じゃがいもは肉じゃがとして程よい食感にします。(調味液には染込み具合が見えやすくするために食紅を混ぜています)

常温で放置する(2時間)

加熱が終了したら、そのまま常温で2時間放置し、調味液が染み込むのを待ちます。袋で少し見えづらいですが、加熱直後は火が入った見た目になっています。

カットして中を確認(煮崩れ具合をチェック)

2時間経ったので、袋から取り出しカットして並べてみました。

細かく見ていくと少し差はあるのですが、パッと見た感じはそれほど大きな差は認められませんでした。一応、重量も計ってみたのですが、大根はどれも-3g程、ジャガイモは誤差程度でほぼ変化なし。アルコール度数による差はありませんでした。

もう少し拡大して見てみます。(画像をクリックするとより拡大できます)

ジャガイモのアルコール度数1.5%だけ少し角が崩れているように見えますが、それ以外はほとんど差は分かりません。なぜ1.5%のイモだけが少し崩れたのが原因不明ですが、ひょっとしたら加熱ムラがあったのかも。

いずれにしてもここで分かる事は、この程度のアルコール度数では煮崩れ防止に役立つほどの効果は見られないということです。0%のイモが崩れておらず1.5%が崩れているのは定説とは逆の効果ですが、3%が崩れていないことから煮崩れとアルコールは、今回の条件下では無関係だったと言えます。

煮崩したくなければアルコールを気にするよりも、調理方法を見直したほうが効果的ですね。フレンチにはミジョテという技法があります(気になる人は調べてみてね^_^)。要は、沸騰するかしないかギリギリの極弱火で素材を揺らさないように煮ていくのですが、大根だろうがイモだろうが角を残したまま柔らかく煮ることが出来ます。つまり、具材同士が物理的に擦れることを防ぐことが大事なので、煮込みをしている最中はお玉やヘラで混ぜたりしてはダメですよ。触れば触るほど、どんどん角は削れて失われていきます。

味を確認(染込み具合をチェック)

全部食べ比べてみた結果…。
はい、ほぼ全て同じでした!笑

1.5%のイモだけはやはり少し表面が崩れた食感でしたが、それ以外は差があまり分かりません。強いて言えば、1.5%の大根は少し甘みが強く感じましたが微々たる差で、大根も上と下では味が違うので、部位の差だったのかも。その程度の差しかありませんでした。

つまりここから分かったことは、アルコール分子が小さい性質を利用して調味料を染み込みやすくする効果も、柔らかくする効果も、この程度のアルコール濃度であれば気にする必要はないということです。

もちろんミクロの世界では差があるのかもしれませんし、よりアルコール濃度を高めれば差が出てくるかもしれません。しかしそれは料理の世界ではあまり関係ありませんね。そんなに高いアルコール濃度で煮こむことは少ないからです。(赤ワイン煮込みは今回よりもだいぶ高いアルコール濃度で煮ますが、素材を柔らかくしたり味を染み込ませるためではありません。コレについてはまた別の記事にするかも。)

結論:煮物などにお酒類を入れる理由は、味付けのため

そうすると、煮物などにお酒やみりんなどはを入れる目的は何でしょうか?
はい。単純に味付け(旨味、甘味、風味など)のためですね。もう少し突っ込んで言うと、主にコクを付けるためです。

旨味のある食材を複数種類入れて、旨味成分を重ねるようにしていくとコクに感じます。ですので、酒類に含まれる旨味を重ねることでコクを作ります。この話は「調味料に頼らない!3つの旨味の作り方 〜その弐「重ねる」〜」で詳しく解説しています。

甘味は、実は旨味とよく勘違いされる味です。旨味成分には甘味を持つもの(グリシンやアラニンなど。海老や蟹に特に多く含まれる)が存在しているためにとても混同しやすく、料理にほんのりと甘みがあることで旨くコクが有るように感じます。

風味には食材同士の相性がありますので、相性の良い組み合わせを料理に入れると格段に美味しくなります。ワインで言うところのマリアージュという考え方と同じです。和食でよく出てくる「醤油+日本酒+みりん」は鉄板の組み合わせをですが、実に風味の相性が良いために多用されます。洋食で言えば、「香味野菜+ワイン+ハーブ類」なんかもそうですよね。そして、旨味がしっかり確保された前提で、料理の風味を複雑にするとコクが増したように感じます。酒類の風味がコクに寄与するわけです。

まとめ

はい。まとめると、

煮物にお酒やみりんなどアルコール類を入れても、「煮崩れ防止」「味の染込み」「柔らかさ」には、体感できるほどの差は確認できませんでした。もちろん、科学的に根拠がないと言っているのではなく、ミクロの世界では効果としては起きているかもしれませんが、料理をする上ではほとんどわからないということです。

ですので、煮物や煮込み料理に入れるお酒やみりんは「味付けのため」ですので、そこに注力して料理のバランスを取りましょう!

料理の法則を学ぼう

料理は、闇雲にただ数をこなしても、なかなか上手くなりません。料理が美味しくできなかったら、なぜ上手くいかなかったのだろう?逆に美味しく出来た時も、なぜ上手くいったのだろう?と原因を特定することがとても大切です。

そして、その「なぜ」をしっかりと考えるために欠かせないのが、料理の理論的な知識です。調理方法ごとになぜそうするのか、なぜこういう材料配分になるのか、なぜそういう手順になるのかなど、料理の工程やレシピには必ずそうする理由があるのです。それを私は料理の法則と呼んでいます。この料理の法則が分かると、多くの料理の謎が解け、自分で料理を考えていくことが出来るようになっていくのです。

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日吉 瑞己(自由が丘フレンチレッスン担当)

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